jamsworldの徒然なる雑記帖

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「高望の大刀」を読んだ感想

桓武天皇の孫である平 高望を主人公にしたライトノベル?のような小説でした。

第13回日経小説大賞受賞作という事で期待して読み始めましたが、個人的に好きな骨太の歴史小説ではなかったですが、平安末期の雰囲気を何となく感じることが出来るお話でした。

2022年:19冊目 評価:☆☆

当時、京のみやびな世界の外では、早くも「もののふ」が勃興してきていた。史実における平高望は、朝廷への反乱を鎮圧した功により上総介に任官され、京から上総国(いまの千葉県中部)に東下し土着したとされる。しかし、その生涯は現在もなお謎に包まれる。 平安末期に武士として栄華を極めた平清盛の系譜も、元をたどれば高望につながり、後に源頼朝の鎌倉政権樹立を助け、有力御家人となった北条氏を代表とする「坂東平氏」にも系譜が連なるとされている。 そして高望の孫は、平将門である。平安中期、関東を制圧して朝廷に反旗を翻し「新皇」を名乗って東国独立をはかった。「祟り(たたり)」で有名な首塚が東京都心に残るように、関東では今も将門信仰が根強い。比類なき武芸の達人で、民衆に慕われた将門には、数々の伝説が残る。その生涯は小説になり、歌舞伎になり、NHK大河ドラマにもなった。 この「将門伝説」を頭の片隅において読めば、本書の物語はより深く愉しめる。桓武平氏の祖として京を離れて東国に武家の基盤を築いた高望の生涯も、将門伝説のように波瀾万丈でドラマチックであるに違いない。 歴史小説といえば権力者の栄枯盛衰が、時代小説であれば無名の侍や庶民の暮らしがドラマとなる。 しかし平安前期は京の貴族社会を除くと、ほとんどの民は、過酷な環境のもと、まだまだ死と隣り合わせのむき身で生きていた。生き抜くことに懸命な人たちの「生」そのものが描かれる歴史ファンタジーの中で、無骨で不器用なスーパーヒーローが、縦横無尽に疾駆する。