jamsworldの徒然なる雑記帖

主に書籍感想を掲載します。その他にはデジタルガジェット購入記録や日々の雑記帳等として。

「アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの」を読んだ感想

昨年までドイツ首相であり、世界のリーダーの一人であったメルケル首相の足跡を経済を中心に解説した本です。

ドイツと日本は漠然と似ている国であると、時々聞くことがあります。

それは第2次大戦後に製造業を中心とした基幹産業によって、発展してきたことで、一方的に日本側がシンパシーを持って語る時に、このような言い方をされていますが、本書を読んで、当然ながらですが日本とドイツは全く違う性格を持った国であることが分かりました。

本書でも言及されていましたが、ドイツ繁栄のキーワードとしては「巨大な単一経済圏」「永遠の割安通貨」「安価で良質な労働力」これらの特徴によってドイツ経済は支えられているとの事。

EU統合・拡大によって、自国を含めた近くで単一通貨・経済圏、そして、EU市民や移民を含めた安価な労働人口など、経済繁栄の為の環境が整っています。

もちろん、EU全体の問題については直接的に影響を受ける立場にはなりますが、メリットとデメリットを比較した中では、メリットの方がやはり大きいと思います。

メルケル首相在任時の功罪としては、現在発生している問題の原因となった動きが多くあったと思います。

その一つはロシアのウクライナ侵攻によって問題が顕在化しているエネルギー問題では、ロシアとの天然ガスのパイプライン建設によってロシアに弱みを握られると同時に侵攻のための軍事費になっていたり、更に経済優先で中国との蜜月を続けたりと、どうしても経済優先であった点は否めないと思いました。

「ドイツがドイツらしくいられるのは他の国がドイツでないから」と言うキーワードは正しく正鵠を得ている内容です。

2022年:15冊目 評価:☆☆☆☆

16年にわたる「女帝」の政治がもたらした「果実」と「負債」。 世界が混迷を深めるなか、“欧州の巨人"はどこに向かうのか? そして日本は何を学ぶのか? リーマンショック、欧州債務危機、その後の強力な経済成長、パンデミック危機……これらの期間(同国史上最長の16年)を通じドイツを率いたアンゲラ・メルケル首相。大きな危機をたびたび「食う」ことで地盤を固めてきた「女帝」とも「鉄の女」とも称される彼女は、EUやユーロ圏の礎を築いた政治家の1人であり、世界の政治史に名を残す傑物といえる。そのメルケルがいよいよ政治の世界を去る。首相在任中にドイツは「病人」と呼ばれた状況から復活し、経済は際立った安定を実現、域内での政治的発言力ではフランスを突き放した。だが「強いにもかかわらず他者のことを考えない」姿ばかりが注目され、尊敬や信頼を勝ち得たわけではない。域内には不公平感が募り、亀裂が生じていったのだ。 では、次のリーダーはこうした亀裂を癒していけるのか? そのリーダーを決める2021年9月の総選挙は二大政党の激しい接戦となり、2021年11月、ようやく連立新政権が発足したが、その先の展望は難しい。 本書は、日本を代表するマーケット・エコノミストの1人で、欧州に対する造詣の深い筆者が、メルケル引退をEU史における1つの節目と捉え、過去を総括し、現状を整理した上で、未来を展望するもの。「欧州の病人」と呼ばれたシュレーダー政権は抜本的な改革により、次のメルケル政権にしっかりその果実を引き渡した。では、メルケル政権は次の時代に向けて何らかの果実を残せたのか。それとも残ったのは負債だったのだろうか。さらに、日本は何を学び、これからをどう考えるべきか。「メルケルなきドイツ」「メルケルなきEU」を展望し、初の離脱国を迎え岐路に立たされているEUに鋭く切り込む。