jamsworldの徒然なる雑記帖

主に書籍感想を掲載します。その他にはデジタルガジェット購入記録や日々の雑記帳等として。

「利生の人 尊氏と正成」を読んだ感想

今年1番の歴史小説です。
これまで足利尊氏楠木正成に関するお話は何冊か
読んだことがありますが、後醍醐天皇を関係付けすることで
理想を追うが故の戦いが上手く描かれています。
それにしても、足利義詮楠木正行の傍らに葬るよう頼んだ
というエピソードを最後に持ってきたところも
話の締めとして良い終わり方でした。

15年ぐらい前になりますが、足利尊氏が開基した
天龍寺に参詣した思い出が蘇りましたが、
今度、機会があれば京都嵯峨野にある宝筐院
(ほうきょういん)に参詣してみたいと思います。

2021年:38冊目 評価:☆☆☆☆☆

第12回日経小説大賞(選考委員:辻原登氏・高樹のぶ子氏・伊集院静氏)受賞!
鎌倉末期から南北朝時代へ移る混沌とした世の人間ドラマを、最新の研究成果を取り込みながら描き、まったく新しい足利尊氏楠木正成、そして後醍醐天皇を造形。選考会では確かな歴史考察と文章の安定感、潔い作柄のまっすぐさが評価された期待の歴史小説の新鋭の登場だ。

「利生」とは衆生に神仏の利益をもたらすこと。上下の別なく、民が国を想う志を持ち寄って各々の本分を為せば、きっと日本は悟りの国になれる――幾度も苦難にあいながら、北条得宗の悪政から世を立て直すため鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇。帝と志を同じくした楠木正成と、鎌倉幕府の重鎮でありながらその志に共鳴し倒幕へと寝返った足利尊氏。三人は同じ禅宗の同門だった。そして彼らが共有した志とは、仏や菩薩が人々に利益を与えることを意味する「利生」という言葉が表す世を実現すること。理想の世をかかげた建武の新政が始まったが、公家もそして武家も私利私欲がうごめく政治の腐敗は止めようがなく、尊氏と正成の運命は引き裂かれていく。